2020年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」で披露した。3度目のファッションショーとなった今回も、「伝統と革新の融合」をテーマに京都の老舗織物メーカーのスコープココとの協業で制作。
ショーの序盤はドレス風にスタイリングした着物、終盤には本人のピアノ演奏とともにアニメ「進撃の巨人」などのプリントを用いた着物を発表した。ショー終了後に囲み取材に登場したYOSHIKIの回答を一問一答形式で公開する。
―今日のファッションショーを終えた感想を教えてください。
もともと僕は呉服屋の長男だったんですが、ミュージシャンの道に進みました。ずっと日本の着物文化を広めたいという思いがあった中で、今日伝統的な着物と冒険的な着物の両方をショーで見せることができてうれしく思っています。
―日本の着物を世界へ紹介していきたいという思いを持っているが、特に若い世代へはどのように訴求したいか?
着物産業はこの10年以上低迷していて、業界の方達と一緒にどう復活させることができるかを考えてきました。若い人たちに興味を持ってもらえるように刺激を与えられる、ロックンロールのテイストや、アニメを融合しました。それにより伝統的な着物と、革新的な「ヨシキモノ」の両方を日本だけでなく、世界の人々に広められると思っています。いずれも従来の着物としても、ドレスとしても着ることができるもの。これは挑戦的ではありますが、20〜30年前には僕がXジャパンとして日本にロックンロールを広めようと活動して、それを浸透させることができたように、着物の産業を広めていきたいです。
―ショーの演出でこだわった部分は?コラボレーションしたアニメについても詳しく教えてください。
私が手掛ける着物のショーも、クラシックのショーも、ロックのショーも全てにおいて、お客さまには何かしらの刺激を持って帰っていただきたいと思っています。良くても悪くても何かを考えさせられるものにしたい。こだわっている点として、今回はサステイナビリティーを意識して、化学染料を一切使用しない藍染の着物も出しています。僕は1年間の8割は日本以外の国にいるほど海外での活動が多いですが、海外でではアニメのファンに会うことが多く、日本のアニメーションの素晴らしさを感じることがよくあります。アニメでは、僕が主題歌を手掛けたこともある「進撃の巨人」や、「スパイダーマン(Spider Man)」などで知られる米マーベル・コミック(MARVEL COMICS)のスタン・リー(Stan Lee)が描いた「ブラッド・レッド・ドラゴン(Blood Red Dragon)」の絵を取り入れています。「ブラッド・レッド・ドラゴン」は実は僕が主人公になっているんです(笑)。スタンは昨年亡くなってしまいましたが、その追悼の意味も込めて作りました。僕みたいなファッション業界では駆け出しの者がこんな冒険的なものを出していいのか迷いましたが、周りに「YOSHIKIさんならやっていいんじゃないですか」と背中を押してもらいました。ショーの中で披露した曲は少しEDMっぽくエッジの利いたものを選び、モデルもアジア人だけでなくさまざまな人種を起用して、着てもらうことを考えました。
―12、13日と大きな台風が日本に上陸し、甚大な被害を受けた人も多い。9月の台風14号のときには実際にボランティアも行なったが?
僕はチャリティー活動を長く行って来ました。これまで寄付は頻繁に行ってきましたが、9月には初めてボランティア活動として現地に足を運び、自分の目で見てきました。最初の1時間は誰かに気付かれているんじゃないかと思うこともありましたけど、一緒に必死でボランティア活動に勤しむ人たちの姿に心を打たれて、(YOSHIKIだと思われてもどうでもいい。このミッションを果たすんだ)という思いが込み上げてきました。今回の台風でもできることは全力で尽くしたい。僕自身の人生も父親を亡くしたり、バンドメンバーを失ったりとしたとき、ファンの皆さんに助けられて生きてきたので、恩返しをしたいんです。今回被害に遭われた方には1日でも早い復興をお祈りしております。
―ファンの皆さんに一言お願いします。
今日のファッションショーは、僕だけではなく素晴らしいチームの方が集まってできました。この17分のために数百人の方が関わってくださったことに感激しております。台風の影響もありますが、僕もほぼ48時間徹夜をしています。今日はこれから幕張でのフェスティバルにも出る予定なのですが、まずこのショーが無事に終わってよかった。あまりにも寝ていなかったので、ショーのフィナーレで花吹雪が出てきたときには「僕は夢を見ているのかな?これは現実かな?」と幻想的な世界に入ってしまいました(笑)。ファッション業界の中ではまだまだ学ばなければいけないことがたくさんありますが、僕はある種の固定観念を破壊しながら、日本の着物を広く伝えていきたいと思っています。